スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『地獄でなぜ悪い』はなぜ悪い?(ネタバレあり)

地獄でなぜ悪い02

 園子温監督の初のコメディ作品『地獄でなぜ悪い』を観た。

20年前に監督自身の体験を交えた脚本の概要、既に観た人の評判、
予告編などで、久々に筆者の観たい園子温映画が観られそうで、
期待値のハードルが上限まで上がっている中での鑑賞。


 だがしかし、あまりに期待値が高すぎたのに反して、
観終わってスカッと出来ずに劇場を後にした。
なんか納得いかない気分の悪さ。


なぜ悪い?
「生涯にただ1本の歴史的作品を撮る!」と標榜したまま
1本の映画も撮れずくすぶっている長谷川博己率いる
素人映画制作集団「ファックボンバーズ」が、
國村隼と堤真一が対立するそれぞれの組長を演じるやくざの組同士の
血飛沫飛び散る抗争を撮影して映画にするという、
ブッ飛んだあらすじは、「こりゃ面白そうだ!」という期待感があった。


 あったんだけどな~。
全編通して、なんだか展開がもっさりとしていて、
それぞれのキャラクターの事情を描く中で、どこかテンポの悪さを感じた。
『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』のような、
緊迫感が途切れない体感時間の短さを感じさせてくれなかった。

これからの展開を予感させる怒濤の勢いで始まるオープニングに胸躍る。
タイトルバックで流れる『仁義なき戦い』のテーマ曲にニヤつく。

しかも、『愛のむきだし』でも使われたゆらゆら帝国の「美しい」まで流す、
小憎たらしい反則技で
「キタキタキタキタ~!
久々に筆者ちゃんが観たい園子温の映画が始まったよ~~~ん!」
と、
トキメキとワクワクで実に身体がたぎってきた!


 …しかし、その冒頭の威勢の良い進撃のグルーヴ感も中盤辺りで失速
話がもったもたして、ウェットなピアノ曲とか流れたりして、
人物の情感が描かれるうちに、気持ちが徐々に冷めてくる。
コメディ映画ゆえか恐ろしい存在であるはずのやくざが、
全然怖く描かれていないからどうにも物語に緊迫感が出ないのかな。


 ごちゃごちゃと色々あって、今作最大の見せ場である、
対立するやくざの組同士の抗争を素人映画集団が撮影するシーンに。

正直、そのクライマックスの殺し合いに到るまでの間、
観ている筆者の気持ちを昂ぶらせる展開も無いまま淡々と進むのも、
なんだか気が抜ける。
長谷川博己が発狂寸前にテンション高まる様相を観ている筆者は、冷静な気分になる。


そしてようやく始まる肝心の見せ場であるやくざ同士の殺し合いは、
見栄えの良さも考慮して「お互い刀しか使っちゃいけない」という
ルールの中で、
まるで三池崇史監督の実写映画版『殺し屋1』のようにポンポン飛び交う四肢欠損、
血がピューピュー出まくりで、
「ホントにこれがPG-12指定でいいの?!」
思っちゃうくらい痛快で、最初はそれでも観ていて楽しかった。
(※PG-12指定とは…映倫(映画倫理管理委員会)が決めた映画鑑賞の際に、
12歳未満(小学生以下)の鑑賞には不適切な表現が含まれる年齢制限規定のことをいう)

二階堂ふみの『キル・ビル vol.1』のユマ・サーマン並の美麗なローリング斬撃、
堤真一のコミカルかつ切れ味の良い殺陣も実に活劇的で見応えあった。

役者を引退してしまうのは本当に勿体無いくらいにカッコ良いアクションを見せる
坂口拓のブルース・リーの『ドラゴン 怒りの鉄拳』オマージュも笑った。
(今作では唯一、坂口拓に感情移入出来た)

でも、徐々にその刀限定ルールもウヤムヤになり、
一斉に銃器を使い始めたりして、
その血まみれの抗争の終わらせ方が、とてもシラケた。

客観的で公平な役割がいきなり介入してきて終了というのは、
「お遊びもいい加減にしなさい!」というツッコミ的な理屈としては筋が通ってるんだけど、
更なるエクストリームな展開を期待する筆者としては、
スッキリしない残便感


 スピルバーグ製作、JJエイブラムス監督の『SUPER8』の中で、
少年達が撮影していた映画を最後のスタッフロールのところで流していたように、
やくざの抗争が強制終了し、長谷川博己が命からがら撮ったフィルムを持ち帰るところで
『これは全部、作り物の映画ですよ~』というメタ的視点を入れて映画が終了する後で、
当然スタッフロールでその撮られた完パケを見せてくれるだろうと思い込んでいたら、
それも無し!
撮影はしたけど、撮影をした事に満足して、編集作業は終わってないから見せないのか。
あくまで、撮影をするという事が大事で、その撮影した中身は重要ではないのか。
見せろよ!!


その他、細かく気になった点。

・堤真一が二階堂ふみを憧れの偶像として神格化しているという設定は良かったものの、
やはり彼の死に様もそれに絡めてうまくまとめて欲しかった。

・元々、あと10日で出所する友近の為に始まった映画撮影なのに、
結局そこの設定が放り投げ。

・星野源の豪快噴射ゲロのシーン、噴射する口の位置がずれてて冷める。

・あんな見ず知らずの青年の星野源にやくざが大事な資金源である麻薬を預けるのは
いくらなんでもありえない。

・特別出演の成海璃子と長谷川博己の会話のくだりが長すぎる上に面白くない。

・二階堂ふみが演じた、友近の娘役は、アプガの古川小夏(下画像)にやらせるべきだった。
(理由:顔が友近にすげえ似てるから。あと、『讐 ADA』のみーこ、あやのんに続いて、
スクリーンでこなっちゃんが刀で人を殺しまくるのを観たかったから。)
t02200303_0522072012505604200.jpg



 「映画愛を見せる為のグラインドハウス映画で、
いちいち細かいリアリティーとか気にすんなよ!!」と、
言われればまあそれも一理もある。
でも、グラインドハウス映画にしても129分は長すぎた。
いや、たとえ長くてもいいので短く感じさせて欲しかった。


以上の点ひっくるめて、今作は悪い意味で、悪いと思いました。




 しかしその本編の内容よりも最も気になったのは、
こんだけ血糊を使いまくっている上に麻薬でラリっちゃう描写もある今作に、
PG12指定を出した映倫の不可解なジャッジ。
映画を審査するジジババ共は、最後の抗争のシーン前に完全に寝てたんじゃないのかね?

PG12指定のおかげか、こういう血生臭い映画が近所のシネコンで観られるのは、
非常にありがたい事ではあるけど。
「PG-12指定でなぜ悪い?」と言われればグーの音も出ません。



 先月までケーブルTVで放送されていた、
園監督初の冠番組であるTV番組『園子温ケーブルテレビ実験室』で、
キーボードを弾き、即興で歌う園監督自身による今作の音楽作曲風景が
最も映画愛を感じられて本編よりも面白かった。

スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。